近年、出生後の子牛に対し、1週間以内に母乳から代用乳に切り替える哺乳が一般化し、それに伴ない、新生子牛に下痢症(白痢)が多発している。これらの多くはいわゆる「病原性」白痢ではなく、「母乳性」白痢と考えられるが、実態は明らかではない。 本研究は、I.新生子牛における下痢症(白痢)の発生状況を把握するため、5ヵ所の各種酪農家及び牧場でアンケート調査を行なった。その結果、1)飼養頭数に関係なく、4/5件で1週間以内に(多くが5日間で)母乳から代用乳に切り替えており、長期間(2ヵ月間)母乳を与えたのは1/5件であった。2)代用乳の製品はそれぞれメーカーが異なり、給与回数(2回〜3回/日)及び給与量(2l/回、給与回数により異る)も多様であった。3)白痢の発生はいずれも認められた。4)白痢の発生時には、(1)下剤投与、(2)製品変更、(3)保存初乳給与、(4)ぬるま湯給与、(5)抗生物質等薬物投与、などが行なわれた。5)白痢発生の要因では、(1)飲ませ過ぎ、(2)低温、(3)消化不良、(4)細菌感染、などが挙げられた。 II.生乳と8種類の代用乳(使用製品5種類と別途入手製品3種類)の乳汁中脂肪酸とミネラル組成を測定した結果、1)脂肪酸組成については、生乳に比べ、代用乳は、C_<10:0>、_<12:0>、及び_<14:0>が1例(C_<10:0>)を除き、いずれも著しく低く、C_<16:0>(6/8)と_<16:1>(7/8)、C_<18:0>(7/8)、_<18:1>(8/8)、_<18:2>(8/8)、_<18:3>(5/8)はほとんどの製品で高かった。不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の比は、生乳が0.46(31.3%/68.7%)に対し、代用乳は0.91〜0.16(46.1〜53.7%/46.3〜53.9%)と、全てで不飽和脂肪酸の割合が著しく高かった。ミネラル含量は、生乳と代用乳間で、Na、Mg、Caはほとんど差がなかったが、K、C1、Pでは代用乳が高かった。 以上の事より、代用乳に植物性脂肪及びミネラルなどが添加されており、代用乳の組成及びその給与方法が白痢発生と密接に関係する事が示唆された。
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