ウシ乳腺上皮細胞は妊娠後急激に増殖、分化し、その後退行期には多くの細胞がアポトーシスにより死滅する。このような作用は、ホルモン、物理的因子などにより調節されているが、その詳細な機構は不明である。そこで、ウシ乳腺細胞のアポトーシス機構を細胞レベルで解明するため、ヒト乳ガン細胞のアポトーシスを引き起こすことが知られている酪酸の作用について検討した。 (1)ウシ乳腺上皮細胞およびヒト乳ガン細胞株(MCF-7)の増殖に及ぼす酢酸、プロピオン酸、酪酸、βヒドロキシ酪酸の影響についてMTT法により測定した。(2)分化前後のウシ乳腺上皮細胞の増殖性を調べるため、Matrigelまたはコラーゲンコート上で細胞を培養し、細胞数を測定した。(3)分化後のアポトーシス誘導について、Matrigel+lactogenic homonesで分化誘導した細胞の、無血清培地によるアポトーシス誘導についてTunel法により検討した。 (1)ウシ乳腺細胞MCF-7の増殖は、酪酸によって濃度依存的に抑制された。プロピオン酸も増殖を抑制したが、酪酸よりは弱い効果であった。酢酸、βヒドロキシ酪酸は、細胞の増殖に影響を与えなかった。(2)コラーゲン上培養において、酪酸はMCF-7に対してアポトーシス誘導効果を示したが、ウシ乳腺上皮細胞に対しては効果を示さなかった。Matrigel上で培養したウシ乳腺上皮細胞は、コラーゲン上培養に比べて細胞数が減少した。(3)Matrigel+lactogic hormonesで分化誘導したウシ乳腺上皮細胞は、酪酸によりアポトーシスが誘導された。
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