平成13年〜14年度の2年間に渡って科学研究費補助金を受け、研究代表者によって雄豚精液で発見された新規リラキシン様蛋白質の精子におけるコレステロール放出と受精能獲得機構の解明に挑戦し数々の新知見を得た。以下にその主要な成果を記す。 1.リラキシン様蛋白によるプタ精子細胞膜コレステロールの放出誘導:リラキシン様蛋白は、濃度に依存してプタ精子の細胞膜コレステロールを放出させ、その効果が11μMで最大となることを明らかにした。 2.人工細胞膜モデルを用いたコレステロール放出制御機構の解析:コレステロールを導入した粒計100nmのリン脂質再構成膜を構築し、センサーチップに固相化させ、表面プラズモン共鳴による分子間相互作用解析により、コレステロール分子との動的相互作用を解明した。 3.[^3H]コレステロールを取込ませた精子によるコレステロール放出作用:[^3H]コレステロールを細胞膜に取込ませプタ精子を作製し、本蛋白が約50%のコレステロールを細胞膜から放出させることを明らかにした。 4.コレステロール放出部位の同定:本蛋白は精子頭部の先体の細胞膜からコレステロールを特異的に放出させることをフィリピン蛍光染色法で突き止めた。 5.精子の受精能獲得に及ぼす影響:本蛋白によって誘起されるコレステロール放出がブタ精子の受精活性の付与(受精能獲得)の起因となるか、クロロテトラサイクリン法で調べた結果、コレステロール放出は受精能獲得反応に直接関与することを見いだした。
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