研究概要 |
家禽の卵子は卵黄膜内層に被われて排卵される。ウズラの卵黄膜内層を構成しているのは,35kDaと175kDaの2種類の糖タンパクであるが,このうち35kDaのタンパクは哺乳類のZPC(ZP3)と相同で,卵胞顆粒膜細胞によって合成分泌されていることが明らかとなっている。最近,ニワトリの肝臓で190kDaのタンパク(95kDaのホモダイマー)の発現が観察され,そのアミノ酸配列は哺乳類のZP1と相同であることが報告されている。そこで本研究では成熟雌ウズラの肝臓からRNAを抽出し,オリゴdTプライマーを用いて逆転写反応をおこない,PCR法および3'RACE法と5'RACE法でZP1遺伝子を増幅した。PCR産物はダイターミネーター法(ABI-377)でダイレクトシークエンスした。エストロゲンによる誘導はジエチルスチルベステロールの腹腔内投与によりおこない,肝臓のmRNA量はRT-PCR法によって測定した。 ウズラZP1の塩基配列を決定し,そのORFから読んだアミノ酸配列を他の動物種と比較した。全アミノ酸934のうち,N末端から194〜529番目は他の動物種にない繰り返し配列を含んでいた。これはPGLQ-QNQHGLVHPGSQTQPGVLRからなる,グルタミンを多く含んだ24アミノ酸であった。顆粒膜細胞を培養するとZPCが可溶性タンパクとして培養液中に分泌されること,肝臓で産生されたZP1は血液を介して卵胞に付着するであろうことを考えあわせると,卵黄膜内層の繊維形成にはZP1とZPCの会合が重要だと考えられた。またZP1mRNAは成熟雌ウズラの肝臓で検出されたが,ジエチルスチルベステロールを投与すると,雄でも誘導されることがわかった。
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