研究概要 |
鳥類ではDmrt1遺伝子がZ染色体上にあることから遺伝子量説を支持する遺伝子として注目される。本研究結果からも雄ではDmrt1遺伝子は2倍量の発現をし、雌の生殖腺よりも多い発現が観察されている。しかもこの発現は孵卵の4日ころから増加し始めることから、雄生殖腺の精巣形成を誘導し始めているのではないかと考えられる。この因子は様々な経路をへて究極的にはセルトリ細胞の分化や抗ミュラー管ホルモン(Anti-Mullerlian hormone, Amh)の遺伝子発現を促進すると予想される。Amh mRNA発現は、孵化5日頃からオス生殖腺に著しくおこり、メス生殖腺では極めて低い。Amhはオス生殖腺の精巣形成に深く関与していると考えられる。Amh遺伝子の上流にはSF1やSox9の結合領域があり,これら因子によるAmh遺伝子の発現制御が予想される。しかし、SF1やSox9のmRNA発現はAmh遺伝子の発現開始より遅れておこることから(Oreal et al., 1998)、これら因子がAmh遺伝子発現に先立ってこれを制御している可能性は低いと考えられる。その他の転写因子によってAmh遺伝子発現がトリッガーされ、その後にSF1やSox9はAmh遺伝子発現を調節している可能性は十分にありうる。したがって、Amh遺伝子発現をトリッガーするような転写因子の同定がまたれる。オス生殖腺ではアロマターゼは発現しないがこれはAmhの抑制によるものと思われる。アロマターゼが発現しないためエストロゲンは産生されない。以上を総合するとZZ胚はDmrt1遺伝子を十分に発現し様々な過程を経てAmhを産生し他の因子とともに精巣形成を促進すると考えられる。
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