研究概要 |
鳥類の性は、哺乳類と同様遺伝的に決定されている。すなわち性染色体の組合せがヘテロWZの胚は雌、ホモZZの胚は雄となる。哺乳類とはヘテロかホモかで性が逆であるが、受精の時点で性が決まることは同じである。近年の急速な分子生物学的発見によって性決定や性分化に関係する遺伝子が単離され鳥類でも、その発現様式が報告されているが、基本的な課題である鳥類の性決定構はなお不明である。これまで性染色体の組合せと表現型との関係からZ遺伝子量仮説が提唱されている。Z染色体の数(遺伝子量)に関係して決まる(多いほど雄、精巣に決定)とするものである。Z染色体上のいくつかの遺伝子の中で性決定・性分化に関係すると言われているのがDmrt1 (doublesex and mab3 related transcription factor 1)であある。鳥類ではDmrt1遺伝子がZ染色体上にあることから遺伝子量説を支持する遺伝子として注目される。雄ではDmrt1遺伝子は2倍量の発現をし、雌の生殖腺よりも多い発現が観察されている。しかもこの発現は孵卵の4日ごろから増加し始めることから、雄生殖腺の精巣形成を誘導し始めているのではないかと考えられている。この因子の標的遺伝子は不明なのでその後のことはわからないが、様々な経路をへて究極的にはセルトリ細胞の分化や抗ミュラー管ホルモン(Anti-Mullerlian hormone, Amh)の遺伝子発現を促進すると予想される。
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