牛の肝臓及び腎臓のヒスチジン合成能に関する生化学的研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13660289
• 研究機関: 宮崎大学
• 研究代表者: 小野寺 良次 宮崎大学, 農学部, 教授 (60040862)
• キーワード: 牛の臓器 / 豚の臓器 / ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ / 牛のヒスチジン合成量 / 豚のヒスチジン合成量 / 鶏のヒスチジン合成量 / 合鴨のヒスチジン合成量 / マウスのヒスチジン合成量

研究概要

本研究では、反芻動物のヒスチジン合成能を証明するために、牛の臓器のヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(HLDase)活性を測定することにし、平成13年度は、牛の肝臓のHLDase活性を測定したので、平成14年度は、牛の腎臓、膵臓、脾臓、筋肉および小腸粘膜の活性を測定した。牛の臓器は、屠場から入手した。HLDase活性は、平成13年度と同様に各臓器の粗酵素液を用いて測定した。その結果、牛の各臓器にHLDase活性が認められ、各臓器は固有の最適pHをもち、単位重量当たりの活性は、肝臓、腎臓、膵臓、脾臓、筋肉、小腸の順に高かった。これらの臓器のうち特に活性の高い肝臓と腎臓および量的に多い筋肉のHLDase活性から、体重約700kgの牛の肝臓を約7kg、腎臓を約1.3kg、筋肉を約300kgとして、ヒスチジン合成量を算出すると、30.8g/日となった。機械的ではあるが、この牛のヒスチジン要求量を可消化粗タンパク質要求量と筋肉タンパク質中のヒスチジン含有率から算出すると、14.6g/日となった。したがって、ヒスチジノールの供給が十分にあるとすれば、この牛は、自らが要求するヒスチジン量を自力で賄っている可能性があると考えられた。続いて、豚の臓器について同様の試験を行った結果、豚では、筋肉に活性は認められなかったので、肝臓と腎臓の活性から豚の肝臓を約2kg、腎臓を約0.5kgとしてヒスチジン合成量を算出すると、この豚は約1.6g/日のヒスチジンを合成すると考えられた。豚のヒスチジン要求量は、すでに示されており、5.5g/日とされているので、この豚は、実際は、約7.1g/日のヒスチジンを要求していると推測することができる。このほか、鶏、合鴨およびマウスの肝臓、腎臓および筋肉のHLDaseを同様に測定した結果、いずれも活性は認められたが、要求量を満たすほどでないことが分かった。

研究成果

• [文献書誌] Shaila Wadud, R.Onodera + 2: "In vitro catabolism of histidine by mixed rumen bacteria and protozoa"Current Microbiology. 42. 12-17 (2001)
• [文献書誌] Shaila Wadud, R.Onodera +2: "Studies on the possibility of histidine biosynthesis from histidinol imidazolepyruvic acid, imidazoleacetic acid, and imidazoleacetic acid by mixed ruminal bacteria, protpzoa and their mixture in vitro"Applied Microbiology and Biotechnology. 55. 219-225 (2001)
• [文献書誌] Shaila Wadud, R.Onodera + 1: "Synthesis of histidine in liver and kidney of cattle and swine"Animal Science Journal. 72. 253-256 (2001)
• [文献書誌] R.Onodera + 2: "Is histidine an essential amino acid in ruminant animals?"Asian-Australasian Journal of Animal Science. 14, Special issue. 123-130 (2001)
• [文献書誌] Shaila Wadud, R.Onodera + 1: "Method for determination of histidine in tissues by isocratic high-performance liquid chromatography and its application to the measurement of histidinol dehydrogenase activity in six cattle organs"Journal of Chromatography B. 767. 369-374 (2002)
• [文献書誌] R.Onodera: "Essentiality of histidine in ruminant and other animals including human beings"Asian-Australasian Journal of Animal Science. 15. 455-454 (2003)
• [文献書誌] 石橋晃監修: "新編「動物栄養試験法」"養賢堂. 642 (2003)