研究概要 |
卵巣除去実験:スナネズミ妊娠中期以降の血中P_4量の低下から、妊娠中後期の妊娠維持に黄体の関与の小さいことが推察された。そこでこの時期の黄体機能を追究するために卵巣除去を行った。妊娠20日の卵巣除去で全胎子が死亡した。毎日4mg P_4皮下投与群の生存胎子の割合は偽手術群と同等となったが、1mg群での割合は有意に低下した。 黄体組織培養実験:妊娠期(妊娠9,18,22日)の卵巣を採取し、黄体を卵巣から分離した。96穴プレートを使用し、1個ごとにRPMI1640(+5%FSC)液中で培養した。黄体を4時間培養後洗浄し、さらに24時間培養した。培養液中のP_4レベルは、妊娠が進むにつれて減少した。個体ごとの全黄体の合計P_4量では、妊娠9日が18と22日より有意に多かった。血清中P_4レベルは妊娠の経過とともに減少した。血中と培養液中のP_4レベルに有意な相関が示され、スナネズミ妊娠中の血中P_4は黄体に依存することが示唆された。スナネズミ黄体細胞の単離と培養:スナネズミ黄体細胞の機能をさらに解明するため、黄体細胞を分離し培養した。コナゲナーゼ0.05%、DNase0.005%、BSA0.1%中で37℃、15分間振とう培養による細胞分離法で良好な細胞の得られた。そして、妊娠9日には大型と小型細胞が存在し、妊娠18日では大部分が小型細胞であった。細胞培養では、LH投与群は妊娠9日と18日において無添加群に比べP_4放出量が有意に上昇した。しかし、妊娠期の間での差は認められなかった。PGF_2α投与群においては無添加群との間に明瞭な差は見られなかった。ステロイドホルモン合成系酵素の遺伝子発現:PregnenoloneからP_4を合成する3β-HSD活性についてRT-PCR法を用いて検討した。スナネズミ3β-HSDに対するプライマーがないことから、ラットとマウスのプライマー5種を用いた。その結果、ラット用プライマー1種から単一のバンドが検出され、ラットと同様の移動位置を示した。このプライマーを用い妊娠9日と18日におけるスナネズミ黄体の3β-HSD発現量を比較したところ、両者の間に明瞭な差は見られず、黄体組織・細胞からのP_4放出量の結果と異なるものだった。
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