ペスチウイルスは牛ウイルス性下痢ウイルス1、牛ウイルス性下痢ウイルス2、豚コレラウイルス、ボーダー病ウイルスからなる。これら4種は牛、豚、緬羊をそれぞれ侵すことに因んで命名されたのであるが、豚コレラウイルス以外の3種はその宿主域が必ずしも固定しておらず、これら動物種の壁を越えて相互に感染するだけでなく、他の偶蹄類にも伝播して発病させることが知られている。ところで、これら4種のウイルスは、ポリクローン性抗体を用いた血清中和試験によってほとんど区別できないとされている。このため、ペスチウイルス属におけるウイルス種の同定はもっぱら宿主動物種に依存してなされる場合が多く、しばしば分離したウイルス株の種の判定に混乱を招いている。申請者はこれまでに、ペスチウイルス属のすべてのウイルス種を一括して検出するための高感度なRT-PCR法を開発してきた。平成13年度は各種動物種由来の細胞培養に汚染していたペスチウイルスの5'非翻訳領域をサーマルサイクラーを用いてRT-PCR法により増幅させた。供試サンプルからグアニジン・イソチオシアネート法によりRNAを抽出し、ペスチウイルスゲノムの5'非翻訳領域の下流に位置するプライマーを用いてcDNAのファーストストランドをM-MLV逆転写酵素により合成した。得られたcDNAを基質として、逆転写反応に用いたプライマーとその上流に位置するプライマーを用いて、PCRを行った。これによりサンプルからは約300bpのPCR産物が得られた。PCR産物はアガロース電気泳動により分画し、トランスイルミネーターにより観察し、ゲルから目的のPCR産物を回収した。得られたPCR産物の塩基配列を決定することとし、これまでに56株のペスチウイルスの5'端非翻訳領域の塩基配列を決定するに至った。これらのデータに基づいて来年席は宿主域への影響について解析を進める予定である。
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