研究課題/領域番号 |
13660296
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
田谷 一善 東京農工大学, 農学部, 教授 (60092491)
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研究分担者 |
代田 眞理子 食品薬品安全センター, 秦野研究所, 研究員
太田 亮 食品薬品安全センター, 秦野研究所, 研究員
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キーワード | Hatanoラット / 条件回避 / 精子運動性 / 性成熟 / 異常精子率 |
研究概要 |
Sprague-Dawley系ラットからシャトルボックス条件回避学習試験で良好な成績を示した動物、あるいは劣悪な成績を示した動物をそれぞれ選抜し、近交系のHatanoラットが作出された。良好な成績の動物をHatano高回避ラット、劣悪な成績の動物をHatano低回避ラットと称し、現在まで40世代を超え維持されている。このHatanoラットは、シャトルボックス条件回避学習試験以外にも、副腎皮質刺激ホルモン分泌等の様々な内分泌学的特徴が見出されている。本研究では、Hatanoラット両系の雄性生殖機能について比較研究を行った。(1)性成熟:春機発動の指標とされている陰茎包皮分離および初回精子形成の日齢が高回避ラットで早く起こることが判明した。また、血中性腺刺激ホルモンおよびテストステロン濃度は、高回避ラットが低回避ラットより高い値を示した。(2)精子運動性:高回避ラットの精子は、運動精子率が高く、精子遊泳速度が速いこと、また、精子頭部の振幅が大きいことが判明した。さらに、Hatanoラット両系の精子遊泳速度の系統差に関しては、ATPの関与が示唆された。(3)精子の形態:低回避ラット精子の異常精子率は、高回避ラットに比べて高く、この形態異常精子の増加が、運動精子率の低下に相関すると考えられた。また、精子の微細構造観察から、低回避ラットの精子は、尾部の頸部(結合部)および中間部にリボゾーム様粒子の貯留程度が多いことが判明した。この低回避ラット精子に認められた粒子の異常貯留が、精子中間部の柔軟性を物理的に障害し、精子遊泳パターンの指標である精子頭部振幅を減少させる可能性が示唆された。以上の結果から、雄性Hatanoラット両系には、春機発動と性成熟、および精子の運動性と精子の形態に明らかな系統差が存在することが判明した。この様に、精子の運動速度に明らかな差異があるにもかかわらず、妊孕性に差のない精子を有するラットの系統は、世界でも初めての例であることから、Hatanoラット両系は、精子の受精能や雄性不妊症に関する研究のモデル動物として有用であろうと考えられる。
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