研究概要 |
Sprague-Dawley系ラットからシャトルボックス条件回避学習試験で良好な成績を示した動物、あるいは劣悪な成績を示した動物をそれぞれ選抜し、近交系のHatanoラットが作出された。良好な成績の動物をHatano高回避ラット、劣悪な成績の動物をHatano低回避ラットと称し、現在まで40世代を超え維持されている。 本研究では、拘束ストレス負荷時における両系統の下垂体・副腎皮質軸の反応性を比較検討した。断頭採血用ビニールサックを用いて拘束ストレス負荷実験を行い、拘束ストレス前、拘束ストレス負荷後5分、15分、30分、1時間、2時間、3時間目およびストレス解放後2時間目に断頭採血し、血中、下垂体前葉組織中および副腎組織中各種ホルモン濃度(ACTH、PRL、コルチコステロン)を測定した。両系統とも、ストレス負荷後,直ちに血中ACTH、コルチコステロン、PRL濃度の一過性上昇を示した。血中ACTH濃度は、両系統とも拘束開始後1時間でピークを示したが、HAAに比べLAAは有意に低い値を示した。しかし、HAAに比べLAAの血中コルチコステロンおよびPRL濃度は、拘束開始後,逆に有意に高い値を示した。また、HAAに比べLAAの血中コルチコステロン濃度は、ストレス負荷前から有意に高い値を示し、拘束後の上昇のピークはHAAでは30分後、LAAでは1時間後とピークの出現時期にずれが認められた。これらの拘束ストレスによるホルモン分泌の相違から、両系統の下垂体・副腎系の反応性に明らかな違いがあることが判明した。 以上の結果から、HAA系ラットは、雌雄共にACTH分泌量が多く、プロラクチン分泌量が少ない事実が明らかとなった。これらの内分泌学的差は、ドパミンの分泌量の違いであろうと推察され、このドパミン分泌量の違いが両系ラットの記憶力の違いに関与する可能性が示唆された。
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