研究概要 |
哺乳類の消化管での自然免疫の一環である上皮細胞のアポトーシス発現と獲得免疫としての結果として消化管内腔に分泌された免疫グロブリンとの関係について成ラットを用いて免疫組織化学的に調べた。 その結果,1.従来IgAが主体とされてきた腸管内腔は免疫グロブリンクラスの分布が一様ではなく,腸陰窩より分泌されたIgGが腸管上皮の粘液層中に比較的多量に含まれることが明らかとなった。2.十二指腸から回腸に至る小腸全長でBc1-xは腸陰窩の上半部から腸絨毛の基部にかけて強く発現し,腸絨毛の中部から先端にかけては弱くなった。これとは逆に腸絨毛の先端部に核内DNAの強い断片化が検出され,IgGを主体とした各種免疫グロブリンクラスの再吸収が認められたが,この現象は腸絨毛の基部では殆ど検出されなかった。稀に腸絨毛の中部から下部にかけても核内DNAの断片化が出現したが,これらの核内DNAの断片化に対応してIgGを主体とした各種免疫グロブリンクラスの再吸収がみとめられた。3.絨毛円柱上皮細胞におけるアポトーシスの発現及び免疫グロブリンの再吸収は腸管内容物との接触により誘導されることも明らかとなった。4.絨毛円柱上皮細胞における免疫グロブリンの再吸収については,従来報告されてきた細胞膜を介して粘膜固有層側へ輸送されるものの他に,免疫グロブリンを高濃度に含んだ基底膜側の細胞質ごと断片化して粘膜固有側へ放出される経路が存在することが明らかとなった。5.小腸絨毛円柱上皮細胞より再吸収された免疫グロブリンの輸送経路に関しては,リンパ管を介して輸送される他に一部毛細血管を介して肝臓へ運ばれることが明らかとなった。 これらの成果に関しては既に学会(第132回日本獣医学会)で公表を終えており,現在投稿準備中である。
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