15年度実験計画のうち、(1)ブラジキニン刺激により遊離した一酸化窒素(NO)およびアラキドン酸代謝産物の定量およびそれらの相互作用の検討に関しては、培養ブタ脳底動脈内皮細胞にブラジキニンを処置しNO濃度としてその代謝産物であるNO_2/NO_3濃度を指標に測定した。ブタ脳底動脈は無刺激条件下でもNOを産生するが、ブラジキニン処置後はブラジキニンの濃度依存性にNO産生量を高めた。この高められたNO産生は、B_2受容体拮抗薬であるHOE140(10^<-7>M)処置により、またNO合成阻害剤であるL-nitro-arginine(10^<-4>M)処置によって有意に抑制された(第138回日本獣医学会報告予定)。(2)ブラジキニンとアンジオテンシン受容体との関連性の検討に関しては、B_2受容体拮抗薬のHOE140がAngII(10^<-8>M)収縮反応を用量依存性に抑制し、またアンジオテンシン変換酵素阻害薬であるcaptopril(10_<-4>M)処置はAngIIの反応を有意に増強した。しかし、L-nitro-arginine(10^<-4>M)存在下でブラジキニン2相性反応のうち弛緩反応を抑制して収縮反応のみが見られるようにした場合、このブラジキニン収縮反応にAT_1受容体拮抗薬であるlosartan(10^<-6>M)処置は有意に影響しなかった。以上の結果は、ブタ脳底動脈内皮細胞に存在するAT_2受容体または平滑筋細胞に存在するAT_1受容体と同じく内皮細胞に存在するブラジキニンB_2受容体との間に相互作用ではないにしても何らかの関与が疑われ、さらなる実験が必要であるものと思われた。ブタ脳底動脈内皮細胞の培養に成功したことは、今回の研究の大きな成果だが、一方平滑筋細胞のコンタミを防ぎ、実験に使えるまで培養細胞を成長させることは、予想以上に困難であったため、G-蛋白関連の実験は、今後の研究課題として残った。
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