研究概要 |
ThromboxaneA2(TXA2)はアラキドン酸から合成されるprostanoidの一つであり、子宮平滑筋上のTP受容体に作用し、PGF_<2α>、PGE_2と共に妊娠維持、分娩誘起に重要な役割を果たしている。今回、TP受容体分布がブタ子宮筋層により異なるか否かを収縮実験、器官培養法及び放射性ligand結合実験から検討した。【方法】発情前期ブタ子宮から作製した縦走筋(LM)と輪走筋(CM)標本を37℃Krebs液又は28℃Kumagai液中に懸垂し、薬物による機械的反応を波形下面積と収縮高で解析した。LM、CM膜標本に存在するTP受容体の特徴は[^3H]SQ29548結合実験から明らかにした。【結果】1.Krebs液中でU46619は両筋層にTTX非感受性の収縮を誘起した。自発収縮の面積を100%とした時、最大反応はLMで390%、CMで197%、pEC_<50>はLMで6.7、CMで7.3であった。U46619誘発性収縮はTP受容体遮断薬、ICI-192605(PK_B,8.5)、SQ29548(8.0)により競合的に抑制された。2.U46619は、Kumagai液中でも子宮筋収縮を誘起した。50mMK^+の収縮高を100%とすると、最大収縮はLMで44%、CMで22%、pEC_<50>はLMで6.4、CMで6.9であり、収縮反応の特徴(pEC_<50>:LM<CM,最大反応:LM>CM)はKrebs液下と一致していた。3.器官培養(5日間)した縦走筋のACh反応性(pD2:7.76)は対照(7.68)と差異はなかった。一方、U46619の収縮高は培養すると著明に低下したが、indomethacin(1μM)処置した培養筋ではこの低下は発現しなかった。4.[^3H]SQ29548はいずれの筋層の膜標本においても一つの結合部位に飽和性に結合した。結合のKd値(LM=29.6nM, CM=30.8nM)に筋層差はなかったが、B_<max>はCMの方(90.9fmol/mg蛋白)がLM(58.2)より約2倍高かった。結合阻害実験で得られたpKi値は、I-BOP>SQ29548>CTA_2>U46619>PTA_2>U44069の順であった。【まとめ】ブタ子宮においてTP受容体は筋層依存性に存在する(CM>LM)。この分布は他の収縮性受容体(oxytocin, AChM_3,NEα_2,ETA, FP)の分布(LM>CM)とは異なり、子宮でのTXA_2の役割を考える上で興味深い。器官培養中、内因性のprostanoidが子宮収縮性に影響を与えることが明かとなり性ホルモンとの関連性について検討したい。
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