研究概要 |
Staphylococcus hyicus表皮剥脱毒素B(SHETB)の活性領域を解析するため、site-directed mutagenesisにより87番目のヒスチジンをアラニンに換えたH87A、135番目のアスパラギン酸をアラニンに換えたD135A、209番目のセリンをシステインに換えたS209C、227番目のリジンをグルタミン酸に換えたK227E、180番目のチロシンをフェニルアラニンに換えたY180Fの5つの人工変異蛋白を作製した。 SHETBおよび5つの人工変異蛋白をヒト表皮由来株化細胞であるNCTC2544細胞に接種し、37℃,48時間培養したところ、SHETB、K227EおよびY180Fでは1:160希釈まで細胞の円形化が認められ、毒素活性が確かめられた。一方、H87A、D135AおよびS209Cでは1:5希釈でも円形化は認められなかった。また、これらの毒素液をSHETBの感受性動物である1日齢ニワトリひなに接種したところ、SHETB、K227EおよびY180Fでは接種3時間以内に表皮剥脱現象が認められたが、H87A、D135AおよびS209Cでは表皮剥脱現象は認められなかった。 以上の成績より、SHETB分子中の87残基目のヒスチジン、135残基目のアスパラギン酸および209残基目のセリンが毒素活性に必須であり、これらのアミノ酸残基を含む領域が毒素の活性発現に関与する領域であることが確かめられた。これら3残基を含む領域はセリンプロテアーゼにおいてよく保存されている構造であるので、SHETBの活性本体はセリンプロテアーゼであると推定される。
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