研究概要 |
健康を保つために必要性が認められている微量および超微量元素は、20数種以上に及ぶ。それらは単独でまた相互に関連しあい生体機能を維持し、また、生体中元素の過・不足により各種の疾患がひきおこされることも知られている。近年、伴侶動物の飼育環境の改善などからそれら動物の寿命は延びる傾向があり、神経性疾患や老齢性疾患および慢性疾患が増加しつつあるが、これらの疾患と微量元素の関連を検討した研究は少ない。さらに、生体内元素の動態にはさまざまな要因がかかわって、これらを定量的に評価する方法も少ないのが現状であるが、近年、多元素同時定量(ICP-MS)が可能となってきている。 そこで本研究では、本学獣医臨床センター(附属動物病院)に来院したイヌを対象に、血漿中微量元素とそれらの疾患との関連性を検討することを目的に行った。 材料は本学の附属動物病院に眼科疾患の治療で来院したイヌのうち、43頭(平成13年度)および22頭(平成14年度)から採取した血液を用いた。血漿中微量元素の分析はICP-MS(ELAN6000、ICPM8500)で、Co, Cr, Cu, Mn, Mo, SeおよびZnを測定対象として行った。 その結果、MnおよびCo濃度の高い個体が2例認められたが、血液学的検査および血漿生化学的検査からは異常は観察されてなかった。しかし、MnおよびCoの高い値を示した犬種はいずれもキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルであった(平成13年度)。同一犬種(キャバリア)で検討した結果(平成14年度)、Mnの濃度の高い個体は1例認められたが、疾患との関連は見出せなかった。
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