研究課題
本研究ではげっ歯類を病原巣動物とする人獣共通感染症のうち、ハンタウイルス感染症とダニ媒介性脳炎を対象に主にげっ歯類を中心に疫学調査を行い、両感染症の日本における感染状況を明らかにすることを試みた。まず、北海道、宮崎県、富山県、島根県でげっ歯類の捕獲調査を行い、捕獲されたげっ歯類についてハンタウイルス抗体の検出を試みた。北海道では捕獲されたげっ歯類のうちエゾヤチネズミのみで抗体が検出された。特に千歳空港の周辺で捕獲されたエゾヤチネズミにも抗体が検出されたことから、空港や港湾などでのネズミ類の防除対策の強化が必要と考えられた。現在、北海道に分布するウイルスを分離するための最適な実験動物を検索中である。また、北海道以外の地域では、エゾヤチネズミが生息していないこともあり、これまで150例以上の血清を検査したが、明らかな陽性を示す個体が発見されていない。しかし、今後も本州での疫学調査を継続し、本州のネズミにはハンタウイルスが感染していないのかどうかについて確認する必要がある。また、ダニ媒介性脳炎の抗体検査にはこれまで中和試験が行われたきたが、生きたウイルスを用いる必要がある、時間がかかるなどの欠点があった。現在、組換え抗原を使用したELISAの開発を試みており、本ELISAの確立により、ダニ媒介性脳炎の診断が安全かつ迅速に実施されることが期待される。
すべて その他
すべて 文献書誌 (6件)