研究課題
本研究ではげっ歯類を病原巣動物とする人獣共通感染症のうち、ハンタウイルス感染症とダニ媒介性脳炎を対象に主にげっ歯類を中心に疫学調査を行い、両感染症の日本における感染状況を明らかにすることを試みた。まず、北海道、宮崎県、富山県、島根県、でげっ歯類の捕獲調査を行い、捕獲されたげっ歯類についてハンタウイルス抗体の検出を試みた。北海道では捕獲されたげっ歯類のうち、エゾヤチネズミとドブネズミで抗体が検出された。特に千歳空港で捕獲されたエゾヤチネズミと小樽港のドブネズミに抗体が検出されたことから、空港と港湾でのネズミ類の防除対策の強化が必要と考えられた。北海道のエゾヤチネズミが保有するウイルスを分離するために、様々な動物にウイルスを接種して最適な動物種を探索したところ、スナネズミが実験動物の中でも最も感受性が高かった。現在、スナネズミにエゾヤチネズミの材料を接種してウイルス分離を試みている。また、ダニ媒介性脳炎の抗体測定にはこれまで中和試験が主に使用されてきたが、危険度の高い生きたウイルスを用いることや、時間がかかるなどの欠点があった。そこで、ウイルス遺伝子を含まない非感染性のウイルス様粒子(VLP)を作出し、VLPを用いたELISAを開発した。本法により、ダニ媒介性脳炎患者の抗体を安全で迅速に検出することが可能になった。
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