前年度に引き続きウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)標準株、主に北海道地方で分離された野外分離ウイルスおよび発症牛あるいは非発症持続感染牛の末梢血白血球からそれぞれウイルス遺伝子を増幅させ、得られたPCR産物の塩基配列を解読して系統樹解析を実施した。BVDVの主要抗原であるE2をコードする遺伝子の塩基配列を解読し、それに基づく系統樹解析により遺伝子亜型を決定した。 その結果、5'非翻訳領域遺伝子(5'UTR)の塩基配列に基づいた遺伝子亜型と同様、北海道地方で検出されたほとんどのBVDVは1aあるいは1b亜型に分類された。しかし、3例は新たに1c亜型に分類された。これら3例は5'UTRの系統樹では1aに分類されていた。さらに、これら3例は下痢症を呈しておらず、うち1例には右旋回運動を主徴とする中枢神経異常が認められた。これまでに1c亜型は野生鹿一例においてのみ確認されており、本研究において初めて牛での感染が確認された。 また、糖尿病併発BVDV感染牛から検出されたBVDVはすべて1a亜型に分類され、それぞれが非常に近縁であり、小クラスターを形成していた。本研究において1aあるいは1b亜型に分類されたウイルスは、それぞれのサブグループ内で非常に近縁であり小クラスターを形成していたが、糖尿病併発BVDVは、それら以上に近縁であることが示された。
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