研究概要 |
1.分娩誘起剤を併用して分娩前12-48時間に1,25(OH)2D3を乳牛12頭に1回筋肉内投与し、血液生化学的に検討した。その結果、以下の成績が得られた。 1,25(OH)2D3群では血漿1,25(OH)2D3濃度は分娩前1日から分娩後0.5日にかけて対照群に比較して高値を示し、血漿CaとiP濃度は分娩前0.5日から分娩後2日にかけて高い値で推移した。分娩直前(分娩4時間)の投与では分娩後の血漿Ca濃度は上昇せず、分娩前3日の投与では分娩後の血漿Ca濃度が低く推移した。投与群の1例が分娩後4日に、また対照群の1例が分娩後0.5日にそれぞれ起立不能となったが、いずれもCa治療によって起立した。 以上より、分娩前12-48時間の1,25(OH)2D3の1回筋肉内投与は高い血漿Ca濃度を保ったまま分娩し、分娩直後の低Ca血症の予防に効果を有することが示唆された。 2.昨年度の成果を踏まえて低カルシウム(Ca)血症の骨代謝との関係を明らかにするために骨代謝マーカーである血漿の酒石酸耐性酸ホスファターゼ(TRAP)濃度を測定し、牛の骨におけるCa代謝を応用的な面から検討した結果、以下の成績が得られた。低Ca血症の発生率の低い農家と発生率の高い農家で飼養されている乳牛83頭について、乾乳期、泌乳期、泌乳最盛期、泌乳中期および泌乳後期におけるTRAP活性値を比較検討した。その結果、低Ca血症の発生率の高い農家ではTRAP活性値が低い値を示し、とくに乾乳期の骨吸収の低下が低Ca血症発生の一因であることが示唆された。 これらの結果から、乳牛の低カルシウム血症の予防に活性型ビタミンD3である1,25(OH)2D3は有効であり、また低Ca血症(乳熱)発生農家を予測するには、血漿TRAP活性値を測定することが有用であることが本研究により明らかにされた。
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