研究概要 |
1.ウシParacellin-1 mRNAの発現 ウシParacellin-1遺伝子を保有する正常な黒毛和種牛2頭とParacellin-1遺伝子のexon1-4が欠失した遺伝性腎尿細管形成不全症(Renal tublar dysplasia,RTD)の黒毛和種牛1頭を対象にして,腎,脳,心,肺,肝,脾,膵,皮膚(頚部),骨格筋(大腿),蹄,第I,II,IIIおよびIV胃,空腸,結腸の16臓器・組織におけるParacellin-1 mRNAの発現について検討した.方法は,各臓器・組織からtotal RNAを抽出し,RT-PCR法,ついでnasted-PCR法によりParacellin-1 mRNAを増幅し,アガロースゲル電気泳動法によって確認した.なお,RNA抽出の対照にはユビキチンmRNAを用いた.その結果,Paracellin-1 mRNAは正常黒毛和種牛の腎臓においてのみ発現が認められた.RTD牛では腎臓においても発現は認められず,検討したすべての臓器・組織において発現していなかった.RTD牛で見られる腎尿細管の形成不全や腎臓以外の皮膚,蹄などの病変とParacellin-1との関連についてはさらに検討が必要であると考えられた. 2.抗ウシParacellin-1抗体の作製 ウシParacellin-1遺伝子の塩基配列から抗原性が強いと推定されるペプチドを合成し,これをウサギに免疫して抗ウシParacellin-1ペプチド抗体を作製した.免疫されたウサギから採取した血清は,ELISA法で合成ペプチドと1/25,000の力価で結合した.ついで得られた抗体とParacellin-1抗原との反応性を確認するために,ウシParacellin-1 mRNAが発現している正常牛の腎臓を材料にして,SDS/PAGE・ウエスタンブロット法を行った.しかし,ペプチド抗体に反応するバンドは検出されなかった.
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