研究概要 |
ラットの皮膚切開創の第一期癒合を実験モデルとして用い、キチン、キトサンの分子量および脱アセチル化度(DAC)の創傷治癒に及ぼす影響について検討した。創傷治癒の程度は切開創の引張強度を指標とした。またコラゲナーゼ合成能の指標として切開部位のコラゲナーゼ活性を測定した。 【材料及び方法】 1)材料:キチン(M.W.6〜37万)、キトサン(M.W.3〜37万)、それらのオリゴ糖並びに単糖、および脱アセチル化キチン(DAC19、49%)を用いた。各材料はEOG滅菌後。生理食塩水で0.1〜10mg/mlに調整した。2)皮膚切開創モデル:全身麻酔下で背側部に約3cmの縦切開を左右に各一カ所作製し、各材料を0.1mlずつ添加し、皮膚縫合した。各個体は4,7,14日に安楽死後、患部を採材した。3)測定項目:a)引張強度:切開中央部の幅10cmの短冊状組織片を採材し、切開部切断までに得られた最大張力を引張強度とした。b):プロリルヒドロキシラーゼ(P-H)活性:4日目の組織片についてHuttonら(1966)の方法で測定した。 【結果】 1)分子量による影響 引張強度においては4日目には全ての投与群で、対照群に対して有意な上昇がみられた。キチン、キトサン群ともキチン、キトサン高分子量群およびオリゴ糖群で上昇する傾向がみられた。P-H活性はキチン、キトサンとも分子量による著明な差はみられなかった。 2)DACによる影響 引張強度においては4日目には全ての投与群で、対照群に対して有意な上昇がみられた。7日目では、DACが高い方がその強度は強い傾向にあった。P-H活性のDAC間による差はみられなかった。
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