創傷治癒時の細胞外マトリックス形成に及ぼすアミノ多糖の役割

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13660317
• 研究機関: 鳥取大学
• 研究代表者: 岡本 芳晴 鳥取大学, 農学部, 教授 (50194410)
• 研究分担者: 南 三郎 鳥取大学, 農学部, 教授 (70032307)
• キーワード: キチン / キトサン / 創傷治癒 / 細胞外マトリックス / 線維芽細胞 / コラーゲン / I型コラゲナーゼ

研究概要

1.線維芽細胞のI型コラゲナーゼ産生能に及ぼすキチン質の影響
キチンおよびキトサンの創傷治癒促進機構について様々な角度から検討を重ねてきたが、その全容は未だ明らかではない。今回、キチン、キトサンおよびそれらの関連物質が線維芽細胞のI型コラゲナーゼ(MMP-1)産生能に及ぼす影響について検討した。
【材料】1)供試細胞:正常ヒト皮膚線維芽細胞(HSF39)および正常ヒト新生児包皮皮膚線維芽細胞(HFFWC、HFF11、NHDF)を用いた。
2)供試薬:キチン、キトサン、キチンオリゴ糖(NACOS)、キトサンオリゴ糖(COS)、N-アセチル-D-グルコサミン(GlcNAc)、D-グルコサミン(GlcN)を用いた。使用時、各サンプルを0.1-10mg/mlに滅菌生理食塩水で希釈調整した。
【方法】各細胞がフラスコ一面に増殖した段階で、供試薬を添加し、経時的に上清を回収した。MMP-1活性はMatrix Metalloprteinase-1(MMP-1), human, ELISA systemで計測した。
【結果】1)どの細胞においても72時間で最も高いMMP-1活性が得られた。2)IL-1添加時ではどの細胞も435.1〜964.0ng/mlのMMP-1産生能がみられた。一方HFFWCおよびNHDFにおいては、IL-1無添加時でもIL-1添加時と同程度のMMP-1活性がみられた。3)HSF39およびHFFWCを用いてMMP-1活性に及ぼす各供試薬の影響を検討したところ、HSF39では、GlcN以外の供試薬においてMMP-1活性の有意な上昇がみられた。一方、HFFWCにおいてはどの供試薬も有意な変化はみられなかった。
【考察】キチン、キトサンは、正常ヒト皮膚線維芽細胞(HSF39)のMMP-1産生を促進することが明らかとなった。またその分解産物であるNACOS、COSおよびGlcNAcもHSF39のMMP-1産生に影響を与えたことから、キチン、キトサンが生体内で分解されても、この作用は消失しないと考えられた。

研究成果

• [文献書誌] Okamoto, Y., et al.: "Effects of chitin and chitosan on blood coagulation"Carbohydr.Polym.. 53. 337-342 (2002)
• [文献書誌] Tamai, Y., et al.: "Enhanced healing of cartilaginous injuries by glucosamine hydrochloride"Carbohydr.Polym.. 48. 369-378 (2002)
• [文献書誌] Okamoto, Y., et al.: "Effects of chitin/chitosan and their oligomers/monomers on migrations of macrophages"Macromol.Biosci.. 3. 587-590 (2003)
• [文献書誌] Hasida M., et al.: "Synergistic effects of D-glucosamine and collagen peptides on healing experimental cartilage injury"Macromol.Biosci.. 3. 596-603 (2003)
• [文献書誌] Tamai, Y., et al.: "Enhanced healing of cartilagious injuries by N-acetyl-D-glucosamine and glucuronic acid"Carbohydr.Polym.. 54. 251-262 (2003)
• [文献書誌] Okamoto, Y., et al.: "Mechanism of wound healing acceleration by chitin and chitosan"Res.Adv.in Macromolecules. 3. 1-22 (2003)