研究概要 |
家畜では妊娠中期以降は妊娠経過のモニターが難しく、特に胎子の成熟度や生死判別あるいは双子診断等は困難で、分娩時における事故の多発につながる恐れがある。 今回、胎盤由来とされるエストロンサルフェート(OS)の産生機構を組織内分泌学的に明らかにするため、体液中OS濃度を経時的に測定した。 2000年〜2001年に鹿児島県内の酪農家にて飼養中の乳牛230頭(妊娠牛169頭、非妊娠牛61頭)について、乳汁中および血液中OS濃度をEIA法(Confirm, ICP, NZ)にて測定した。その結果、人工授精後100日以上の妊娠牛では平均150pg/mlとなり、非妊娠牛および人工授精後100日未満の乳牛の13.0pg/mlより有意に高くなった。また、妊娠牛のうち、28頭については毎月乳汁を採取し、妊娠経過に伴うOS濃度の変化を観察した。その結果、OS濃度は妊娠前半は低いものの、妊娠100日で150pg/ml、160日以降で平均1000pg/ml以上を示した。一方、血液中のOS濃度では、妊娠150日以上で平均1000pg/ml以上となり、非妊娠牛の316pg/ml、人工授精後150日未満の606pg/mlより有意に増加した。 今後は、例数を増やすとともに、糞中のOS濃度も合わせて検討する。また、妊娠維持ホルモンのプロジェステロン濃度についても、血液中や乳汁中濃度を測定し、OS濃度との関連を検討する。さらに、胎盤材料を入手し、組織内分泌学的に検討する。
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