研究概要 |
牛やウマの妊娠診断において、胎盤性ホルモンである血中エストロンサルフェート(OS)濃度を測定し、また検査材料として材料採取が容易な乳汁や、尿、糞中濃度もあわせて測定した。 供試動物として、牛とウマを用い、OS濃度の測定では、マウスモノクローナル抗体を用いたマイクロプレートによるEIAを確立し、同時に血液中プロジェステロン(P_4)濃度を測定した。 その結果、妊娠牛では血中OS濃度が妊娠140日以降で1.1ng/mlとなり、非妊娠牛(0.36ng/ml)より有意に高くなった。乳中OS濃度は妊娠100日以降で236pg/mlとなり、非妊娠牛(14pg/ml)より有意に高くなった。血中P_4濃度は授精後、妊娠黄体の形成とともに増加し(>10ng/ml)、分娩後急速に1.0ng/ml以下に減少した。 牛の糞中OS濃度は血中OS濃度と高い相関を示し、妊娠牛では74〜6,500ng/gと高く、特に妊娠末期の1.5ヶ月に急増した。糞中OS濃度と胎盤停滞の関連では、正常群で妊娠270日に2,300ng/mlと胎盤停滞群947ng/gより高く、胎盤の成熟度との関連が示唆された。糞中OS濃度と新生子牛の体型では、妊娠末期の糞中OS濃度と新生子牛の鼻頭尾長および胸囲について正の相関関係がえられた。 尿中OS濃度は尿中クレアチニン濃度により補正し、測定した。その結果、ウマの尿中OS濃度は、交配前(0.16μg/mgcre)に比べ、妊娠2ヶ月(0.46μg/mgcre)から有意に高くなった。また、血中OS濃度は交配前(20ng/ml)に比べ、妊娠1ヶ月(32ng/ml)から有意に高くなったが、血中P4濃度では妊娠ウマと交配前のウマに有意差は得られなかった。 今回、牛とウマの妊娠診断において、体液中のOS濃度をEIAにより測定したところ、妊娠家畜では非妊娠や交配前に比べ有意に高くなった。検査材料として、血液だけでなく、材料採取が容易な乳汁や、糞、尿中OS濃度の測定も可能であり、牛で妊娠100日、ウマで妊娠2ヶ月より高くなることが明らかとなった。
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