<疫学調査:野鳥の汚染状況についての実態調査および汚染推定のための解析方法の検討> 1)野鳥サンプルの追加と実態調査:本年度も新たに数十羽の野鳥を入手して常法に従って臓器を摘出し、サンプルとして追加保存(-20℃)するとともに、保存サンプルの一部を順次無機化(灰化)してICP法により23元素の含量を決定しデータベースに追加した。 2)単独元素による汚染(カドミウム(Cd)汚染):汚染推定のための解析方法の検討 2-1)昨年度作成したCd汚染解析のための非汚染対照としての標準回帰直線(Cd standard regression line : CSRL)について、本年度は野鳥サンプルで得られたCd含量をこれに当てはめて、その有効性と実際のサンプルでの応用性を検討した。まず、野鳥の捕獲地域別比較(秋田、宮城、石川、福島、茨城および千葉県;総計5種58羽)では含量差が示され、秋田県と石川県で捕獲された野鳥の腎臓中の平均Cd含量は10μg/g dry wt.以上で、他県のものより高い傾向であった。また、秋田県と宮城県由来のものでは肝臓中の平均Cd含量は5μg/g dry wt.前後で、その他の県のものより高い傾向を示した。これらの成績とCSRLとの比較では、秋田、宮城、石川県で捕獲されたカモ類でCSRLから逸脱する傾向が示された。これらの成績から実際のサンプルでは、非汚染として捕獲した野鳥の中には汚染されていると推定されるサンプルが混入していた可能性が示唆された。他方、本年度の解析で、Ti、Cr、Vなど他の重金属元素との複合汚染も示唆されたのでこれらについて現在検討中である。 2-2)成績の公表:上記の成績の一部を第135回(2003.9.青森)および137回(2004.4.東京)日本獣医学会で報告した。また、Epidemiology(Environmental indicator for the Cd pollution using wildlife)に投稿中である。また、その他の元素による汚染として行った成績(タリウム汚染)についても投稿中であり、本年度行った野鳥での解析結果については投稿準備中である。これらについては、ホームページと各雑誌をリンクさせ、参照できるように準備中である。 <培養細胞に対する有害重金属元素の影響> 培養細胞:昨年までに、Vero細胞とCaco細胞を使用してこれに対するL.monocytogenesの侵入性を各血清型で比較した結果、Vero細胞がモデルとして有効であることおよび菌の侵入性に血清型が関連する可能性が示唆(論文投稿中)されているので、これに対する重金属元素の影響を検討中である。
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