研究概要 |
1.動物飼育環境差にみる好ケラチン性真菌の生息と分布 前年に続き住環境に生息する病原性真菌の生態及び分布を把握すべく真菌学的調査を行った。対象は,住環境にあって健康被害を及ぼす可能性の高い基質のハウスダストとした。今回は,ヘア・ベイティング法で検索した。環境として屋内動物(イヌ・ネコ)飼育環境(A)10家庭と非飼育環境(B)12家庭からハウスダストを回収し,馬毛を用いて分離培養を行った。その結果,(A)では好ケラチン性真菌としてMicrosporum gypseum, M.cookei, Trichophyton ajelloi, Chrysosporium spp.がそれぞれ6,2,1,5家庭陽性であった。一方,(B)では2,3,0,2家庭で陽性となった。この結果から,動物飼育環境の方が動物非飼育環境に比べて好ケラチン性真菌がやや多く陽性であったが,いずれにしても住環境のハウスダスト中には皮膚感染性の強い真菌が生息していることが今回の調査から解明された。2年間の調査からズーノーシス原因真菌の生息性が把握でき,分布拡大していることが確認された。 2.ズーノーシス原因真菌の生息適環境 水分活性(Aw),温度適性,基質特異性について環境適応性の観点から基礎研究を行った。Awでは,Eurotium, EmericellaおよびAsperigillusの一部で発育最低Awは0.78〜0.85にあり,乾燥下で長く活性を維持しているものと思われた。また温度適性では,40℃以上での活性維持は,特に病原性で問題とされるAspergillus fumigatus, Absidia, Rhizomucorで確認され,しかもA.fumigatusは乾性にも耐える真菌であり,健康被害面から生息適性を詳細に検索する必要がある。 3.分離株の生物学的特性 真菌の持つ生物学的特性のうち病原性に関与する菌体外蛋白分解酵素産生性について住環境由来真菌50種で検討した。その結果,酵素活性の強い真菌として,Aspergillus flavus, A.fumigatus, Emericella nidulans, Alternaria alternata, Curvularia lunata, Fusarium oxysporum, F.solani, Paecilomyces lilacinus, P.variotii, Stachybotrys atra等で確認されたことから,起病性については今後さらに基礎研究を進める必要がある。
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