犬においてワクチン接種後の副反応としてアナフィラキシーなどワクチン成分に対するアレルギー反応が認められ、獣医学分野で大きな問題となっている。本研究において、このワクチン接種後のアレルギー性副反応の原因アレルゲンを検討した。 12種類の市販の犬用混合ワクチン中に含まれる牛血清アルブミン(BSA)をサンドイッチELSIA法で測定したところ、高濃度(60μg-5mg/dose)のBSAがこれらのワクチンに含まれることを見いだした。このBSAは、ワクチン中のウイルスやレプトスピラを生産するときの培養液中の牛胎児血清(FCS)やBSA等の混入と考えられた。 次にワクチン接種後のアナフィラキシーなどのアレルギー反応を起こした10頭の犬においてワクチンに対するIgE抗体を蛍光ELISA法で調べたところ、10頭中8頭で血清中のワクチンに対するIgEが認められた。また、陰性対照としてのワクチン接種後・副反応が何も無かった犬50頭において、血清中のワクチンに対するIgEを測定したところ、ワクチン特異的IgEは認められなかった。 さらに、これらのワクチンに対するIgE抗体が認められた8頭においてワクチンに安定剤として含まれるゼラチンや混入しているFCSに対するIgEを測定したところ、全例でIgEが認められた。これらの結果より、犬のワクチン接種後のアナフィラキシー等の原因アレルゲンはワクチンに含まれるFCS成分や安定剤(ゼラチン)であることを明らかになった。
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