単純な集積培養法ではこれまで単離できなかった好熱性古細菌を分離培養する試みとして、箱根の温泉試料についてMPN法による分離培養を行った。また属特異的PCRプライマー用いたPCR法により既知属の検出を行い、さらにPCR法で特定できなかったものについて16S rDNA部分塩基配列を決定しその帰属を試みた。 大涌谷の硫気孔土壌試料(90℃・pH2.0)からはAir・85℃・pH5下ではSulfurisphaera属を、H_2-CO_2(4:1)・70℃・pH4下ではAcidianus属及びStygiolobus属を検出した。また他の硫気孔土壌試料(60℃・pH1.4)からはH_2-CO_2(4:1)・70℃・pH4下ではAcidianus属のみを検出したが、Air・70℃・pH5下ではAcidianus属、Sulfurisphaera属、Acidianus brierlyei、Sulfolobus hakonensis、新奇Sulfolobales目古細菌を検出した。さらにAir・55℃・pH2.5下ではPicrophilus属及び新奇Thermoplasmatales目古細菌を検出した。早雲山温泉の試料(40℃・pH2.4)からはAir・85℃・pH5下でSulfurisphaera属を、またAir70℃・pH5下ではMetallosphaera属を検出した。 以上のように、本方法により同一試料、同一培養条件でも複数種・属を分離培養することが可能であり、またこれまで単離することのできなかったStygiolobus属やSulfolobales目の新属と思われる好熱性古細菌を分離することができ、本法の有効性が示された。
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