1.腸管平滑筋層を単離培養し、自動運動を計測する実験系を確立した。 生後10-14日目のマウスの小腸平滑筋層を剥離し、酵素処理と物理的に細切することで自動運動能を保持した組織小片を単離し培養する事ができた。この培養系は薬理学的にも試薬投与による腸管平滑筋の機能変化をスクリーニングする上で大変有効であり、実用化に向けて特許を出願した(出願番号2002-64237)。 2.単離培養系を用いて、カハールの介在細胞の細胞内カルシウム変動をカルシウムイメージング法により解析した。 上記の組織小片を用いて、カルシウムイメージングを行い、L型カルシウムチャンネルの阻害薬を添加する事で、平滑筋のカルシウム変動をブロックし、カハールの介在細胞が示す周期的な細胞内カルシウム変動を選択的に記録する事に成功した。またこの周期的なカルシウム変動が本細胞のリズム発生機構に密接に結びついている事、その変動は細胞外からの非選択的陽イオンチャンネルの一つTRP4を介して生じる可能性を示唆した。 3.マウス胚性幹細胞(ES)から自動運動能を持つ器官としての腸管(様)構造を分化させることに成功した。 ESは様々な組織や細胞に分化する能力を持つが、器官とし機能する腸管様構造を形成させるうることを、世界で初めて明らかにした。その腸管様構造は自動運動能を有し、腸管上皮、結合組織、カハールの介在細胞や壁内神経を含む平滑筋層から構成されていた。今後、このESの分化システムを用いて、腸管形成のメカニズムやリズム発生機構の解析を行う予定である。
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