研究概要 |
1.S1-1及びPMLのGFP, RFP融合蛋白の発現と相互作用 昨年度は老化細胞の核輸送機能の評価に用いる発現ベクター系を作成した。即ち、種々の核内蛋白質のGFP融合蛋白の発現ベクターを構築してきた。癌抑制因子PMLの遺伝子産物:PML蛋白は核内にヌクレオボディを形成し、細胞老化の誘導、及び細胞増殖制御に関与する。前骨髄性白血病細胞では、染色体の転座によりPML遺伝子の核移行ドメインが欠失している。肺癌及び乳癌などの抑制遺伝子候補のひとつであるDEF-3(=LUCA15,H37)はヒト第3染色体に存在する。一方、X性染色体上に存在するS1-1遺伝子は、LUCA-15と51%の高いホモロジーを持つ。本年度は、PMLとS1-1分子の機能的類似性に注目し、新規癌抑制因子S1-1分子の核内局在を解析比較した。S1-1-RFP及びGFP融合蛋白の発現ベクターを構築し、S1-1蛋白が核クレオボディとして局在すること、またPMLとの相互作用を見出した。 2.老化細胞モデルの開発 通常の継代培養法による老化細胞の作成は、長期間の培養の必要性、細胞の保存に対して耐久性が非常に低く、また細胞の安定性にデメリットがあるなど多くの問題点が浮かび上がった。安定な老化細胞モデルの必要性を痛感し、老化細胞モデルとして老化形態及び活性酸素分子種の増加などの老化形質を随時誘導可能な細胞モデルを考案した。即ち、正常細胞にテロメラーゼ遺伝子を導入し、これを不死化することで安定な細胞の供給を可能にした。現在、この不死化hTERT-TIG3S細胞を用いて、PMLやHV12Ras遺伝子の導入、及び薬剤処理による細胞老化誘導系を構築中である。
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