遺伝子発現調節に関与する重要な核内機能蛋白質の輸送制御に注目し研究を行なってきた。此れまでp53転写因子などの細胞質蓄積における細胞骨格蛋白質の関与を明らかにした。 1)ヒト組織由来の培養老化細胞を用いた核内輸送機能解析モデルを構築した。一連の核内蛋白質のGFP-融合蛋白質の発現ベクターを老化細胞及び若い細胞にトランスフェクションし、その核内及び細胞質局在を比較した。皮膚組織由来の老化細胞では、転写調節因子であるp53及びc-FosなどのGFP融合蛋白質は主に細胞質に蓄積するが、若い細胞では顕著に核内へ輸送される。 2)核輸送機能の評価に用いる発現ベクター系を作成した。即ち、種々の核内蛋白質のGFP融合蛋白の発現ベクターを構築してきた。癌抑制因子PMLの遺伝子産物:PML蛋白は核内にヌクレオボディを形成し、細胞老化の誘導、及び細胞増殖制御に関与する。各蛋白質S1-1のRFP及びGFP融合蛋白の発現ベクターを構築し、S1-1蛋白質がヌクレオボディとして核内に局在すること、またPML4アイソフォームとの相互作用を見出した。 3)S1-1p110及びS1-1p130が核内へ移行しヌクレオボディを形成することを明らかにした。ヌクレオボディ形成蛋白質として著名なPML(promyelocytic leuikemia)とのアライメント解析、相同機能ドメインの解析を行った。その結果、S1-1及びPMLに約20アミノ酸の配列からなるホモロジーの高いドメインが二つ存在することを明らかにし、各々をEGKEドメイン並びにZドメインと命名した。EGKE及びZドメオンの欠損によりS1-1及びPMLのヌクレオボディ形成が阻害された。S1-1及びPMLの両者に存在するZドメインはヌクレオボディ形成に働く共通の重要なドメインであることが強く示唆された。またPML4のC末74アミノ酸がその細胞質局在に関与することを明らかにした。
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