研究概要 |
マウス由来のPdx1 cDNAをpcDNA3プラスミドに組み込んだベクターと、pcDNA3 emptyベクターをそれぞれIEC-6細胞にエレクトロポレーション法で導入した。これらの細胞をトランスメンブレン(Falcon cell culture insert)上で培養した。抗生剤G418に耐性のクローンのみを選びだし、Pdx1遺伝子の発現をNothern Blot法で調べ、Pdx1 mRNAを高濃度発現する細胞株IEC-6-YK14とIEC-6-YK15を樹立した。これらの細胞はIEC-6細胞の150倍のPdx-1 mRNAの発現を認めた。 YK-14細胞とIEC-6細胞の形態の変化を光顕的に調べたところ、IEC-6細胞はトランスメンブレン上で単層の敷石状の構造を示したが、YK-14細胞はさく状構造を示した。YK-14細胞がホルモン産生能を有するかどうかを調べる為に、免疫細胞化学を施行した。さく状構造を示した場所で、chromogranin A,serotonin,somatostatin,CCK,gastrin,PPが陽性に染色された。さらに、免疫蛍光2重染色で、これらの細胞は複数のホルモンを同時に産生することが明らかになった。しかし、insulin,glucagon,GLP-1,GIP等のホルモンの産生は認められなかった。 YK-14細胞の微細構造を電顕的に観察し、IEC-6細胞と比較した。IEC-6細胞は核/細胞質比が大きく、細胞質の細胞小器官が未熟であったが、YK-14細胞でさく状構造を示した場所では、扁平な細胞の上に別の細胞が重層する形態を示した。上に乗った細胞の細胞質には多数の分泌顆粒が観察され、分泌顆粒にはchromograninAの陽性反応が認められた。 各種転写因子のmRNAの発現をRT-PCRで調べたところ、正常ラットの膵臓では、NeuroD,ISL-1,Nkx-6.1,Pax6,Pax4が発現した。YK-14細胞ではNeuroD,Nkx6.1,Pax6の発現が見られたが、ISL-1,Pax4の発現は見られなかった。
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