研究概要 |
Amphiphysin I(以下amph I)は,ニューロンの軸索終末においてシナプス小胞膜のエンドサイトーシスに関与するタンパク質である.我々はヒト網膜のcDNAクローニングを行い,従来型のamph Iの他に,数百アミノ酸残基の挿入部分をもつ数種の新規amph Iスプライスパリアント(amph Ir)が網膜特異的に発現することをヒトおよびラット網膜で見いだした.平成13年度はamph Irを特異的に認識する抗体の作製を行い,この抗体を用いてamph Irの網膜組織内局在を免疫組織化学的に検索した. 1)amph Iには存在せずamph Irにのみ特異的に挿入されている領域で,かつヒトとラットでアミノ酸配列が保存されている領域をGST融合タンパク質として大腸菌に発現させ,この融合タンパク質を抗原としてウサギに免疫し,ポリクローナル抗体を作製した.ウエスタンプロットによる解析から,この抗体はamph Irのみを特異的に認識することがヒトおよびラット網膜で確かめられた. 2)抗amph Ir抗体を用いてラット網膜の免疫組織化学を行うと,内網状層と外網状層`が強く染色された.さらに蛍光二重染色法を用いてamph Irとリボンシナプスおよびコンベンショナルシナプスのマーカータンパク質との局在を詳細に比較したところ,amph Irはリボンシナプスを形成する視細胞(桿体と錐体)と双極細胞の軸索終末部分に特異的に局在することが明らかになった.また,免疫電顕による観察ではシナプスリポンにもamph Irに対する免疫陽性反応を認めた. 3)amph Irと従来型amph I,およびamph Iのアイソフォームのamphiphysin IIとの網膜内での共在あるいは局在様式の違いについては現在検討中である。
|