1)副腎皮質細胞の分化因子の検索を目的として研究をスタートさせたが、必要な抗体の作製法の開発に大部分の時間と労力を割く結果となった。しかし、抗体作製のための基本技術とその応用法をほぼ確立することができた。今回開発した抗体作製法はバクテリオファージを用いるこれまでになかった方法である。 (1)細胞のサイトソル分画に対するファージ抗体を効率よく選別し、しかもその抗体価をドットブロット法によって簡便に測定する方法を開発した。 (2)従来、銀染色で検出していたゲル上の蛋白について、化学的にビオチン修飾した蛋白とアビジン-FITC結合体を用いることによって検出する蛍光法を開発した。この方法は組織化学に応用することが可能である。 2)免疫組織化学法と酵素組織化学法を用いて、老化ラットと糖尿病ラットの骨盤神経叢内のNO合成酵素の発現を検索した。その結果、骨盤神経叢内のNO合成酵素含有神経細胞は老化ラット、糖尿病ラットの両方において染色性が低下すること、糖尿病ラットにおいて低下の程度が顕著であることがわかった。このことから、老化や糖尿病では骨盤神経叢の神経細胞のNO合成酵素の発現量が低下していることが示唆された。 3)ラットにおけるGhrelinの発現を生化学的、免疫組織化学的に検索したところ、血中Ghrelinは周産期に高値で、その由来は胎盤であること、出生後には胃がGhrelin産生の主な場所になることがわかった。
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