研究概要 |
タイト結合(TJ)の膜蛋白であるclaudin(CL)は現在までに少なくとも22種類から成るファミリーを形成している。各組織の上皮・内皮は,固有のTJの形態およびバリア機能を持っており,CLの発現パターンの解析はTJの多様性を説明するうえで重要である。脳血管内皮のバリア機能は胎生期には未熟であり,TJのstrandを形成する膜内粒子はE面付着型である。しかし成獣では膜内粒子はP面付着型となり同時にバリア機能も成熟する。そこで,胎仔と成獣の脳でのCLの発現パターンをRT-PCRで比較た。その結果、マウス成獣では、CL-1,2,3,4,5,6,8,9,10,11,12が発現し、CL-15,18,19は発現していなかった。一方、胎生18日では、CL-10の発現が弱かった。また、大動脈では、CL-1,5,10,12,15が発現していた。これらの結果から、血管内皮には、少なくともCL-1,5,10,12,15が発現しており、脳血管においては、CL-15が発現していないこととCL-10の発現が成長に伴って増加するということがわかった。また、CL-10,15にEGFPを付与してMDCK細胞にて発現すると、CL-10はE面付着型、CL-15はP面付着型のタイト結合を形成することがわかった。一般に、P面付着型のタイト結合のバリア機能は高く、逆にE面付着型のタイト結合のバリア機能は低いと言われている。今回のRT-PCRの結果は、これと矛盾している。しかし、タイト結合のバリア機能は、発現しているCLの組み合わせによるとも言われており、in situ hybridizationなどで脳血管内皮に発現しているCLを、今後、解析していく予定である。
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