研究概要 |
タイト結合(TJ)の膜蛋白であるclaudin (CL)は20種類以上から成るファミリーを形成している。各組織の上皮・内皮は、固有のTJの形態およびバリア機能を持っており、CLの発現パターンの解析はTJの多様性を説明するうえで重要である。脳血管内皮のバリア機能は胎生期には未熟であり、TJのstandを形成する膜内粒子はE面付着型である。しかし、成獣では膜内粒子はP面付着型となり同時にバリア機能も成熟する。そこで、成獣と胎仔の脳でのCLの発現パターンをRT-PCRで解析した。大動脈では、CL-1,5,10,12,15が発現しており、血管内皮細胞はこれらのCLを発現していると考えられる。しかし、成獣の脳では、CL-1,5,10,12は発現していたが、CL-15は発現していなかった。一方、胎生18日では、CL-10の発現が弱かった。これらの結果から、脳血管内皮は、CL-15が発現していないこととCL-10の発現が成長に伴って増加するという点で、他の血管内皮とは異なると推察される。また、CL-10および15にタグを付与してMDCK細胞にて発現すると、CL-10はE面付着型、CL-15はP面付着型のタイト結合を形成することがわかった。一般に、P面付着型のタイト結合のバリア機能は高く、逆にE面付着型のタイト結合のバリア機能は低いと言われている。今回のRT-PCRの結果は、血液脳関門と矛盾しているように思われる。しかし、タイト結合のバリア機能は、発現しているCLの組み合わせとそれらの比率によるとも言われており、今後はこの点についてさらに検討していきたい。また、CL-1のC末端はZO-1と結合し、さらに、ZO-1はアクチンフィラメントと結合している。ZO-1結合ドメインに変異を持つCL-1をMDCK細胞に導入すると、CL-1とZO-1の結合が阻害されて、細胞側面膜に異所性のタイト結合ストランドが形成された。このことから、CL-1とZO-1の結合は、タイト結合が本来の細胞膜頂端部に形成されるうえで重要であることが示唆された。
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