研究概要 |
精子先体(アクロソーム)内部に存在する4つの特異分子(アクリン1(MN7)、アクリン2(MC41)、アクリン3(MClOl)、エクアトリン(MN9))の受精における機能と生化学的性質を明らかにするための研究を行い、以下の成果を得た。 1.抗先体分子抗体の体内受精における作用 上記各分子を認識するモノクローナル抗体(mMN7,mMC41,mMC101,mMN9)の卵管内微小注入実験および体内受精実験を行った。その結果、抗体は注入後少なくとも20時間、卵管膨大部に残存することを証明した。さらにmMN9抗体投与群では、受精率および妊娠率ともに低下し(P<0.05)、未受精卵の囲卵腔に精子を確認した。なお、注入操作による着床胚へのダメージは認めなかった。これらのことから、mMN9抗体は実際の生体内で受精阻害作用を示すことが明らかになった。また、今回新たに開発した微小注入法は体内受精における抗原分子の機能阻害実験だけでなく、薬物のリスクアセスメントに必要なスクリーニングの開発に応用できる可能性を示した。(Reproduction 122:649-655,2001) 2.先体特異分子に対する卵子側分子の同定 アクリン2(MC41)と卵子透明帯との相互作用について、mMC41抗体によるファーウエスタンブロット法や免疫電顕法により解析した。その結果、アクリン2は75kDaのセリンプロテアーゼと複合体を形成し、さらに透明帯分子ZP2と結合することを証明した。また、この分子は先体反応初期に精子細胞膜と外先体膜の融合により形成されるハイブリッド小胞に局在することを見いだした。これらのことから、アクリン2は先体反応時、とくに透明帯との二次結合の初期段階に深く関与することが明らかになった。(Dev.Biol. 238:332-341,2001)
|