研究概要 |
本研究の目的は、新規GPIアンカー型蛋白質であるGPI-80の好中球細胞内局在と、接着分子であるβ2インテグリン(CD18)の活性化に伴うGPI-80の動態変化を、形態学的側面から明らかにすることである。 好中球において、CD18の局在を解析してみると、非刺激時は主に細胞内の穎粒様コンパートメントに存在しているが、fMLP刺激によるCD18(好中球)の活性化に伴い、CD18は移動し、細胞表面に発現されることが明らかとなった。次にGPI-80の局在を解析してみると、CD18と同様に、非刺激時は細胞内の穎粒様コンパートメントに、刺激により細胞表面に移動することがわかった。 CD18の活性化に伴うGPI-80の動態変化を明らかにするために、GPI-80とCD18の2重染色を試みればよいわけであるが、これら分子に対する入手可能な抗体を検討した結果、特異性が高く、かつ免疫細胞化学に応用可能な抗体は、どちらともマウス・モノクローナル抗体であったため、同一種の抗体を用いて2重染色することは、困難であった。最近、同一種の抗体を用いて行う新しい多重標識法として、Zenon法(Molecular Probes社)が報告され、我々はこの方法を導入して、解析を進めた。GPI-80とCD18の2重染色から、fMLP刺激により細胞表面に移動した両分子は、全てではないが、共局在を示した。今回の結果と、生化学的報告(J Immunol 162:4277,1999)を考え合わせると、GPI-80は、CD18の活性化(好中球の活性化)に伴い、巨分子レベルでは、GPI-80とCD18が直接接触(GPI-80がCD18を直接修飾)していることが示唆された。 トポロジー解析に新しい手法を開発し導入する必要性に迫られたことに伴い、好中球一培養血管内皮細胞の相互作用解析が遅れ、その一部は課題として残された。
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