基底膜成分のラミニンのα1、α5鎖のC末端、Gドメインのアミノ酸配列に由来する細胞接着性ペプチドのうち、培養マウス唾液腺や毛包原基の器官形成を阻害する活性をもつ、AG73配列(RKRLQVQLSIRT)とA5G77配列(LVLFLNHGHFVA)に先ず焦点を絞り、これらの合成ペプチドをkeyhole limpet hemocyaninに結合させ、ウサギならびにモルモットに免疫した。AG-73の免疫では、ペプチドに対する抗体価の上昇は認められなかったが、A5G77では抗血清を得ることができた。そのうちの1つR1(抗A5G77抗血清)をプロテインAカラムで精製したIgG分画についてさらに詳細な検討を行ったところ、ELISA法では特異性を認めうるものの、ウエスタンブロット法では特異性を検出しえなかった。単層培養条件下での上皮細胞とペプチドとの結合に抗体が及ぼす作用を検定する目的で、胎生マウス肝由来の上皮系株細胞(eE1-10)を用いたテラサキプレート上での細胞接着実験系を新規に構築して、A5G77ペプチドに対する細胞接着に及ぼすR1抗体の作用を検討したが、有意差を検出し得なかった。現在、A5G77ペプチド結合カラムによるアフィニティークロマトグラフィー法でR1のIgG分画よりA5G77特異的IgGの精製を実施中である。今後、モルモットより得られた新規の抗A5G77抗血清についても同様の精製を実行し、それぞれの諸性質をアッセイする予定である。
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