基底膜成分のラミニンα5鎖のC末端、Gドメインのアミノ酸配列に由来する細胞接着性ペプチドのうち、培養マウス唾液腺の器官形成を阻害する活性をもつ、A5G77配列(LVLFLNHGHFVA)に対する抗体作製を平成13年度に引続き試みた。keyhole limpet hemocyanin(KLH)をキャリアーとして用いて得られた抗血清(モルモットを免疫したもの17ロット、ウサギを免疫したもの2ロット)をえたが、ペプチドに対する特異性は認められたものの、いずれもタイターが低く、応用範囲が極めて限られた。そこで、実験計画に基づき、マルチメリック法による抗原作製を行うこととし、A5G77配列の最小活性単位であるA5G77f配列(LVLFLNHGH)のマルチメリック体を合成、ウサギに免疫し、抗血清R3を得た。ELlSA法により、R3のA5G77f配列とそのスクランブル配列A5G77fTそれぞれとの結合を比較したところ、R3がA5G77f配列に対して、100〜1000倍程度高いアフィニティーを有することが確認できた。培養マウス唾液腺の器官培養系でR3の効果を調査したが、無血清培養条件で10%添加しても、器官形成に関わる活性は検出できなかった。現在、R3より、A5G77f配列をエピトープとする免疫グロブリン分画のペプチドアフィニティーカラム法による精製を進行中で、器官形成に関わる活性、免疫組織化学への応用、等の観点から引き続き解析をすすめる予定である。
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