研究概要 |
ラミニンはα、β、γの3種のサブユニットからなる分子量600-900kDの巨大分子で複難の機能ドメインからなる。α、β、γ鎖にはそれぞれ5種、3種、3種の遺伝子が同定されおり、それぞれは組織や発生の各ステージにおいて特異的な発現様式をとる。我々は、発生期の顎下腺では、α1鎖とα5鎖アイソフォームが上皮基底膜に一様に発現することを見出した。とれらのアイソフォームの機能を探る目的で、α1、α5鎖のアミノ酸配列に由来し、細胞接着活性をもつ50以上のラミニンペプチドを、顎下腺・毛包の器官培養系、肝由来株化上皮系細胞の細胞接着実験系でアッセイし、器官形成を阻害するペプチド,AG73(RKRLQVQLSIRT)とA5G77f(LVLFLNHGH)、細胞接着・伸展活性を促進するペプチド,A5G33(ASKAIQVFLLAG)とA5G65(HQNMGSVNVSVG)を見出した。これらの知見に基づき、AG73,A5G77f, A5G33に焦点を絞り、それぞれの特異抗体の作成を試みた。各ペプチドを合成、常法に従ってキャリアータンパク質(keyhole limpet hemocyanin)と結合させた後、ウサギ皮下に2週間間隔で3回ないし5回の注射を行なった。一部の実験では、モルモット皮下への免疫を試みた。いずれの方法でも、十分な抗体価を持つ抗血清をえることができなかった。そこで、A5G77fについては、そのマルチメリック体を合成し、ウサギに免疫することを試みた。この方法ではA5G77fに対してコントロールペプチドに比して100-1000倍程度高反応性の抗血清R3をえることができ,現在この抗血清の生物学的特性を上述の器官培養系や細胞接着実験系で精査中である。
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