平成14年度実験計画に沿い、前年度作成したラット実験的皮膚熱傷モデルを材料として、成体の創傷治癒過程における新生血管形成機序の免疫細胞化学的検索を展開した。1)経時的に採取した皮膚生検組織を試料として、VEGFとVEGF受容体の免疫細胞化学を施行したところ、受傷3日目の健常部真皮から受傷部真皮に急速に伸展している毛細血管内皮細胞と、その近傍に集合した線維芽細胞にVEGFとVEGF受容体免疫陽性反応が観察された。受傷5日目には、毛細血管から離れて存在する線維芽細胞にもこれらの免疫陽性反応が観察された。2)1)の連続切片上で、第8因子関連抗原、エンドセリン(ET)-1、およびET変換酵素-1の免疫細胞化学を施行したところ、1)の免疫細胞化学と一致した所見が得られた。3)1)と2)の試料を電顕観察したところ、受傷3日目の毛細血管内皮細胞と細胞質突起で接触する線維芽細胞はWeibel-Palade(WP)小体を含有し、さらに、受傷5日目の毛細血管から離れた部位の線維芽細胞も高率にWP小体を含有することから、いずれも血管内皮前駆細胞(EPC)へのphenotypeと推察された。これらの結果から、ラット実験的皮膚熱傷モデルの創傷治癒課程において、1)真皮線維芽細胞由来と推察されるEPCが新生血管に編入する血管発生の様式による血管形成が観察された。2)新生毛細血管先端部の内皮細胞が産生・放出するVEGFは近傍の線維芽細胞のEPCへの急速な転化をVEGF受容体介在で誘導し、さらに、これらのphenotypeが産生放出するVEGFは新生毛細血管から離れた部位の線維芽細胞のEPCへの転化に関与することが推察された。3)これらのphenotypeは早期にET-1の産生と修飾に関与することが確認された。4)骨髄性EPCの血管発生への関与の解析は今後の課題として残された。
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