成体の創傷治癒過程における新生血管形成機序の形態学的解析を以下のごとく展開した。100℃の金属円柱を深麻酔下成熟ラット背部に一分間圧着させて作成した実験的皮膚熱傷モデルから経時的に採取した皮膚生検組織を試料として、1)パラフィン包埋切片上でvon Willebrand因子(vWf)の免疫細胞化学を施行したところ、受傷3日〜5日後に健常部真皮から受傷部真皮に遊走した線維芽細胞様の細胞のうち、新生毛細血管近傍と同血管から離れた部位にいずれも索状に集積した細胞はvWf免疫陽性反応を呈し、さらにWeibel-Palade(WP)小体含有が電顕観察で確認されたことから、血管内皮前駆細胞(EPC)のphenotypeと考えられた。2)1)の連続切片上で、VEGFとVEGF受容体の免疫細胞化学を施行したところ、VEGF免疫陽性反応は新生毛細血管内皮とその近傍のEPCで、flk-1免疫陽性反応は同血管近傍のEPCで、flt-1免疫陽性反応は同血管近傍および離れた部位のEPCで観察された。3)1)の連続切片上で、エンドセリン(ET)-1、bigET-1およびET変換酵素-1の免疫細胞化学を施行したところ、1)のvWfの免疫細胞化学と一致した所見が得られた。これらの結果から、本実験モデルの創傷治癒過程において、1)真皮線維芽細胞由来と推察されるEPCが新生毛細血管に編入する血管発生の様式による血管形成が確認された。2)新生毛細血管内皮細胞が産生・放出するVEGFは近傍の線維芽細胞のEPCへの転化を受容体介在性に誘導し、さらに、これらのphenotypeが産生・放出するVEGFは同血管から離れた部位の線維芽細胞のEPCへの転化に関与することが推察された。3)EPCはWP小体が出現する比較的早期のphenotypeからET-1の産生・修飾に関与することが示された。
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