膜電位感受性色素を用いたニューロン活動の光学的多部位同時測定法を用いることにより、モルモット小腸粘膜下神経叢を構成するニューロンの電気的活動を光学的シグナルとして多数の部位から同時測定し、その時間的・空間的パターンのマッピングをおこなった。 実験には幼弱モルモットから摘出した小腸壁の粘膜層と筋層の間から剥離した粘膜下神経叢を含むシート状の組織を取り出した。この標本を、タンパク質分解酵素(collagenaseおよびprotease)を含む溶液中で約2時間incubateして結合組織をlooseにする処理を加えた。さらに標本を約12時間標準リンゲル液あるいは組織培養液中でincubateした後に、styry1系膜電位感受性色素di8-ANEPPS(またはdi4-ANEPPS)にて染色をおこない、ニューロン活動を色素の蛍光変化による光学的シグナルとして424素子フォトダイオードアレイにより検出した。個々のフォトダイオードが光学的シグナルを検出する領域(pixe1)とニューロンの位置関係およびシグナルの波形のパターンを考慮しながら、個々のニューロンの活動電位に由来する光学的シグナルを同定し、各ニューロンが活動電位を発生するタイミングのマップを作成した。このマップをもとに神経叢を構成する一つ一つのニューロン活動の時間的・空間的パターン解析をおこなった。各ニューロンは、独立したタイミングで自発発火しており、1:1の興奮伝達をおこなうような「強い」シナプス結合を示すニューロンペアが見られなかった。この一方で同じようなタイミングでburst状の自発放電を開始するニューロン群や、逆に一方が活動を開始すると他方の活動が終止するようなニューロン(群)の組み合せがみられ、ニューロン(群)間に興奮性/抑制性のmodulationと呼ぶべき「弱い」シナプス結合が存在することが示唆された。
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