研究概要 |
本研究では、胃酸分泌細胞の基底側膜に存在する細胞防御塩素イオンチャネル(Cl^-チャネル)の分子実体、およびストレス因子によるCl^-チャネルの調節機構を明らかにするため、生化学的、分子生物学的、電気生理学的研究を行い、以下のような新しい知見を得た。 1. ウサギ胃酸分泌細胞の細胞防御Cl^-チャネルはインターロイキン-1βによる活性酸素(O_2^-)産生により抑制されるが、この機構に百日咳毒素非感受性GTP結合蛋白質のG_<13>が介在していることがわかった。G_<α13>のmRNAは、胃粘膜のなかでも特に胃酸分泌細胞に高発現していた。 2. 細胞防御Cl^-チャネルの分子実体が、CLCA1である可能性について検討した。まず、ウサギCLCA1を気道上皮より新たにクローニングした。ウサギ胃酸分泌細胞の細胞防御Cl^-チャネルは、細胞内Ca^<2+>上昇によって活性化されるという点でCLCA1と類似した性質を示したものの、胃酸分泌細胞より調製したpolyA^+RNAにおいて、CLCA1遺伝子は有意に発現していなかった。したがってCLCA1は細胞防御Cl^-チャネルを構成する分子ではないと考えられた。 3. CLC-5チャネルの胃酸分泌細胞における分布を、特異的抗体を用いて検討した。ブタおよびウサギ胃粘膜切片の蛍光抗体二重染色で、CLC-5蛋白質は、Na^+,K^+-ATPaseの分布とは異なり、H^+,K^+-ATPaseとほぼ一致した分布を示した。胃酸分泌細胞ホモジネートより調製した各画分に対するイムノブロツトにおいてもCLC-5は、H^+,K^+-ATPaseと同様の分布パターンを示した。これまでCLC-5が胃酸分泌細胞に発現していることは報告されていなかった。CLC-5が細胞防御Cl^-チャネルである可能性は低いものの、胃酸分泌細胞の機能維持に重要な蛋白質であることが示唆される。
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