研究概要 |
腎遠位尿管細胞由来培養細胞を用いて、チロシンリン酸化を介したcAMPによるクロライド輸送制御機構の解明を目指した研究を遂行し、平成13年度には以下のことを明らかにした。 1.cAMP刺激は2相性の持続的なクロライド輸送を促進し、このクロライド輸送はチロシンリン酸化酵素阻害剤であるtyrphostin A23の前処理により完全に抑制されるが、不活性型の構造類似体tyrphostin A63によっては、何ら影響を受けなかった。この結果より、cAMP依存的なクロライド輸送は、チロシンリン酸化酵素による制御を受けていることが示された。 2.cAMP依存的なクロライド輸送は、クロライド輸送の放出過程を担うクロライドチャネルと取込み過程を担うブメタニド感受性共輸送体の2つの過程から構成されている。そこで、チロシンリン酸化の阻害機序を明らかにするために、チロシンリン酸化酵素阻害剤(tyrphostin A23)存在下で、クロライドコンダクタンスを測定したところ、部分的な阻害を受けていたが、完全には阻害されなかった。この結果から、チロシンリン酸化依存的な制御を受けているのは、主にクロライド輸送の取込み過程を担うブメタニド感受性共輸送体であることが示された。 3.さらに、cAMP刺激は、実際にチロシンリン酸化酵素を活性化し、チロシンリン酸化を変化させているかを、ウエスタンブロッティング法で調べた。cAMP刺激は、いくつかのタンパク質(〜60 kDa,120〜130kDa,〜200kDa)のチロシンリン酸化の増大を引き起こしており、これらのタンパク質チロシンリン酸化が、クロライド輸送制御に関与している可能性が示唆された。 今後は、cAMP依存的なクロライド輸送に関与しているチロシンリン酸化酵素の同定とその活性化機序の解明を目指すものである。
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