研究課題/領域番号 |
13670048
|
研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
栗原 敏 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (90057026)
|
研究分担者 |
大津 欣也 大阪大学, 医学系研究科医学部, 助手 (20294051)
草刈 洋一郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (80338889)
本郷 賢一 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (00256447)
|
キーワード | 心筋 / トロポニン / SERCA2a / マウス / エクオリン法 / β受容体 / Ca^<2+>transient / 筋小胞体 |
研究概要 |
心筋の興奮収縮連関が破綻すると、収縮不全や拡張不全が招来されることが明らかになってきた。心筋細胞内Ca^<2+>handlingの調節には多くの蛋白質が関わっているが、中でも筋小胞体のCa^<2+>ポンプであるSERCA2a(心筋筋小胞体Ca^<2+>-ATPase)が中心的な役割を果たしている。近年、分子生物学的手法を用いて、SERCA2aを心筋に選択的に過剰発現させると、心肥大や心不全になりにくいことが指摘されている。しかし、これまでの遺伝子変異動物を用いた研究では主として慢性心不全に関する研究は多いが、急激に起こる心機能の低下の原因に関する研究は少ない。今回我々は、SERCA2aの選択的過剰発現心筋を用いて、急性の収縮不全や拡張不全を起こす病態時に、SERCA2aの選択的機能亢進によって細胞内Ca^<2+>-handlingと収縮調節がどのような影響を受けるのかについて調べた。Ca^<2+>transient(CaT)のピーク値はSERCA2a過剰発現心筋(TG)の方がnon-TG(NTG)心筋よりも大きかった。また、CaTの減衰時間、収縮、弛緩の時間経過はTGの方がNTGよりも速かった。Isoprenaline(Iso)によってTG心筋のCaTはほとんど影響されなかった。急性収縮不全をきたす病態として、呼吸性(Co_2)アシドーシスを用いた。アシドーシスならびにアシドーシスからの回復時におけるCaTと収縮張力を、SERCA2a過剰発現心筋と正常心筋とで比較した。アシドーシス時の収縮抑制に対しても、またアシドーシスからの回復時の収縮維持に関しても過SERCA2a剰発現心筋は正常心筋よりも収縮低下が抑制された。この結果は虚血性心疾患の初期などでおこるアシドーシスによる収縮不全に対して、SERCA2aの選択的発現増加による細胞内Ca^<2+>-handlingの機能亢進が有用であることを示唆している。
|