研究概要 |
G蛋白質共役型受容体刺激後に開口するCa^<2+>透過型陽イオンチャネルである「受容体活性チャネル(TRPチャネル)」は興奮性細胞や非興奮性細胞で報告されている陽イオンチャネルの実体ではないかと考えている。TRPチャネルは現在までに大きく3つのサブファミリーに分類されている(TRP-Canonical(TRPC),TRPV,TRPM)。初年度、TRPMに属するTRPM7を同定しHEK細胞に発現させ、その機能解析を行った。このTRPM7はH_2O_2により活性化された。また、細胞内シグナル伝達系として、βNADが重要であることがパッチクランプ法で明らかになった。 次年度にはHEK293細胞に発現させたTRPC3チャネルの電気生理学的解析を進めた。内在性のG蛋白質共役型受容体(P_<2Y>受容体)を活性化するために、ATP 100μMを細胞外に投与した。孤立した単一HEK細胞から記録したTRPC3チャネルの電流一電圧関係はlinearでOmV付近に逆転電位があり、TRPC3チャネルはイオン選択性の低い陽イオンチャネルであった。しかし、2つ以上のHEK細胞が接触している細胞から記録したTRPC3チャネルの電流一電圧関係は弱い内向き整流性を示し、40mV付近に逆転電位があった。この電流一電圧関係はCa^<2+>-release-activated Ca^<2+>(I_<CRAC>)チャネルの性質と似ており、TRPC3がI_<CRAC>チャネルを形成している一員である可能性を示唆している。しかし、これはgap junction等の細胞間の連絡のためのクランプエラーなのか、細胞接着因子等によりイオン透過性が調節されているのか、細胞周期によりイオン透過性が調節されているのか、今後検討する必要がある。
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