研究概要 |
【はじめに】磁気共鳴装置を用いた脳機能のマッピングは,非侵襲的であり,空間的あるいは時間的分解能にすぐれ,末梢感覚受容器刺激時の中枢興奮部位同定研究において大きなアドバンテージを有している。この目的のため,主にヘモグロビンの磁性変化を検知するBold法が用いられている。しかし,これは興奮状態変化に伴う血流量変化を検知するため,直接的ではなく,またその信号強度変化もわずか数%と小さく,微小な刺激に対する応答を見ることは容易ではない。今回我々は,Mn^<2+>造影剤を用いたT_1-weighted MRIにより,中枢のNaCl感受性部位を同定した。この方法はMRI造影剤としてCa^<2+>アナログであるMn^<2+>を用い,神経細胞興奮時にCa^<2+>チャネルから流入するMn^<2+>によるT_1緩和時間変化によりコントラストを作成する。このため,血行動態に依存しない,Ca^<2+>依存性細胞興奮を直接検知することができる。 【方法】麻酔下Wistarラットを用い,100mM MnCl_2を静脈内投与しながら,内頚動脈あるいは側脳室から高張NaCl溶液を投与し,前後でBioSpec spectrometer(ABX-4.7/40,Bruker, Karlsruhe)を用いて,proton imageを撮影した。Mn^<2+>造影MRIの妥当性を検討するため,同一刺激を用い,Mn^<2+>造影MRIにより同定されたニューロンとFos immunohistochemistryにより染色されたニューロンを比較した。 【結果と考察】高張NaCl溶液内頚動脈投与により,皮質,室傍核,視索上核,外側手綱核などで有意な信号強度の増加が見られた。また,側脳室投与では側脳室周囲からこれらの部位に時間遅れをもって,信号強度の増加が起こっていることが分かった。これらの興奮部位はFosの結果とよく一致していた。以上の結果から,Mn^<2+>造影MRIは自律神経中枢研究の有用な手段であることが確かめられた。
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